2023.11.10 イベント
11月の月例会では、講師に山下淳弁護士(アクアシス法律事務所)をお招きし、ある刑事事件を題材に「日米法文化の相克」についてご講演いただきます。日頃、国際企業法務に携わる皆さまにとって、大変参考になる内容かと思います。
是非お声掛けいただき、奮ってのご参加をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。
講師 山下淳弁護士より
2000年に我が国大企業の社長となったカルロス・ゴーン氏は、日本社会へのインパクトという点で、現代の黒船ともいうべきものでした。企業再建を果たした2004年には、「新しい企業経営の道を拓」いた功績により、日本自動車殿堂から、殿堂者として表彰され、その後も日本のマスコミは、彼をして「カリスマ」経営者として褒めたたえ、2017年には総理官邸で他の有力経営者と一緒に、閣僚と会談するようなステータスでした。それが2018年になると一転、同年11月に金商法違反(有価証券報告書虚偽記載)で東京地検特捜部に逮捕・起訴され、それまでの会社法上の地位を追われ、その後、特別背任等で追起訴され、それまでの栄光の地位から転落しました。多くの日本人が、そして多分、相当数の外国人関係者も、彼の裁判の行方に重大な関心を持っていたことでしょう。ところが、保釈中の2019年12月末に至り、例の、衝撃のニュース―ゴーン日本から逃走―がもたらされたのです。
これに対して、我が国検察庁も必死に対応しました。防犯カメラ等からゴーンの逃走を援助したと思しき人物―アメリカ人父子を特定した上で、彼らの母国アメリカに対して、犯罪人引渡条約に基づく引き渡しを要求・実現して、二人を東京地裁で裁くことを行ったのです。私は、この世間の耳目を集めた事件に、何の因果か、移送前の2020年の後半から、米国当局により身柄を拘束された二人について、アメリカ在住の弁護士達と協力して対応・弁護することになりました。その当時は、アメリカの弁護士も移送に必死の抵抗をしており、アメリカ側が日本の移送要求に応じるか否かは不明であり、加えてコロナ禍の真っただ中である2021年年明けに、果たして彼らが日本に移送されるか否か、予断は許さない状況でした。しかし、同年3月に至り、二人はついに日本の官憲に引き渡され、成田経由で小菅の拘置所に収監されました。それから取り調べ、起訴(3月22日)、判決(7月19日)があり、二人は同年8月以降、国内の刑務所で服役しました。報道によれば、2022年の10月にはアメリカ側に引き渡され、程なく、解放されたとのことです。
この事件は、実は、日本の刑法上は決して重罪とはいえない犯人隠匿罪(刑法103条/3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)について、日米の犯罪引き渡しが行われるという異例の展開を経るという、国内外の耳目を集めた大事件でした。それにも関わらず、報道等を見ても、その問題点や今後への課題、特に、日米の文化の相違に起因する違いを明確に理解することは、当然のことながら、なかなかに難しいものと感じました。日頃、企業法務に携わりながら、日本とそれ以外の法域(米国がその典型であることは言うまでもないでしょう)のギャップに悩んでいられるであろう皆さまに、この事件について理解を深めていただき、少しでも皆様の日頃の考えるヒントを提供できれば、講師として、これに過ぎる喜びはございません。何卒宜しくお願い申し上げます。
<講師ご紹介>
講師ご紹介
山下 淳 弁護士(アクアシス法律事務所)【ご略歴】
1984年 東京大学法学部卒業
1988年~ 弁護士登録と同時に田中・高橋法律事務所入所
2001年~ クリフォードチャンス法律事務所(2008年より東京事務所の共同マネージング・パートナー)
2011年~ K&L外国法共同法律事務所
2014年~ ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所
2023年7月よりアクアシス法律事務所(現職)
他に2015年~2018年、黒田電気社外取締役
2019年~日清紡ホールディングス社外監査役【取り扱い分野】
キャリアの前半は、航空機ファイナンスや不動産流動化案件を含むファイナンス取引が中心、2000年中盤以降は、主にM&Aや合弁企業設立を中心とした会社法関係の取引に従事。一方、全期間を通じて、国際・国内の商業取引紛争(国内外の訴訟、国際商事仲裁)や航空機事故訴訟に関与。以上、いわゆる渉外弁護士としてのキャリアの一方、2000年以降、パイロットによる業務上過失致死傷事件(無罪判決)、衆議院議員の秘書に対する政治資金規正法違反事件(いわゆる西松建設事件・陸山会事件)、AIJ投資顧問にかかわる詐欺・金商法違反事件(控訴審)に弁護団の一員として関与。
日時 | 2023年11月10日(火)16:00~18:00 |
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場所 | Zoomミーティング ※前日までにZoomのリンクをお知らせします。 ※Zoom入室時に「会社名 お名前」での表示をお願いいたします。 |
テーマ | ある刑事事件における日米法文化の相克 ~あのカルロス・ゴーン被告の逃亡を手助けしたアメリカ人父子が日本の刑事手続きで経験したこと~ |
お申し込みは終了しました。
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